真夜中にちまちま依頼されたお仕事をしておりまして、その時に音がないと淋しいのでなんとなくつけたテレビに映っていたのが、この番組でした。
ドキュメント72時間「大阪・西成 貸しロッカーブルース」 - NHK
大阪のホームレスのまち、あいりん地区にある貸しロッカー屋。
月1000円~3000円くらいで貸し出されるロッカー、そこに入ってるのは、ホームレスのおじさんたちの生活のためのもの・貴重品・捨てられないもの。
淡々とした音楽とナレーションの中で綴られる、ロッカーの中身とそれを預けるおじさんたち。
日雇いの仕事をもらいにセンターに足を運んだり、まる一日歩き回って鉄クズを拾い集めるおじさんたち。「世間はお盆休みですよ?」と問いかける取材陣におじさんは答える。
「地元に帰ったって、水をかけられるか塩まかれるかだよ」
ナレーションが流れる。「営業マンをしていたが事情があって退職、この街に流れてきた」
(事情があって)番組中何度も、出てくる人たちを紹介するときに使われたフレーズ。
「事情」は、ギャンブルによる借金やらなんやらでの実家とのトラブルだろうか。若気の至りで起こした刑事事件かもしれない。最近よく見かける若者がしでかしているようなこと、あんなことで完膚無きまでに叩かれ追い出されたのかもしれない。
そうやって、地元での再生のチャンスを失ったおじさんたちがこの街に集まってきている。
あいりん地区では年に1回、夏祭りが行われる。祭りの冒頭には1年間に亡くなった人たちの慰霊祭が行われる。今年は80人。
丸一日鉄屑を集めて回るおじさんのロッカーの中に入っていたのは、会社員をしていた頃の雇用保険の手帳。「自分が確かに働いていたという証」として大事にしているという。おじさんは言う。「生活保護を申請すればこんなことしなくても暮らせるんだよ、でも俺は自分の力で働いていたいんだ」おじさんが見せてくれた明細、一日中大阪の街を歩いて集めた鉄屑の売り上げは、2800円と少し。
別のおじさんが捨てられない箱、その中には前職の大工道具が入っていた。
バブルが崩壊して仕事がなくなって、ここに行き着いたというおじさん。おそらくはただ仕事がないからじゃなくてパチンコやらなんやらで相当やらかしてここに来たんだろうと思う。大工さんも土建屋さんも雨の日にはよく行ってるから。
そのおじさんも箱を大事にしまいながら言う。「死ぬまで働いていたいんよ」
画面を眺めながら思った。なんでこの人たちは同じことを言うんだろう、その理由はなんなんだろう、って。でも眺めていて気付いた。ここは、そういう人が集まる街なのかもしれない。生活保護を受給することも、状況を悲観したり絶望したりして死を選ぶこともせずに、死ぬまで働き続けることを選んだ人がここに集まるのだろうと思う。
彼らの多くはおそらく、過去に、私たちが顔をしかめるような情けないこと、悪いこと、ひどいことをしてきた人たちだ。だからこそ、再生の道を絶たれそこにいる。
でもその暮らしの中で、働くことをやめずにそこに生きているということ。働きたいと毎日センターに足を運んでいるということ、そこには何か大きな、大事なことが埋まっているように思えて仕方なかった。なんだと言われてもよくわからないのだけど。
私たちは、誰かの失敗や一時の悪事に直面した時に、それを完膚無きまでに叩き再生を阻止できるほど立派に生きているんだろうか。
どうしようもない人は多分死ぬまでどうしようもない、そんな人はこれまで何人も見てきた。そういう人に手を差し伸べてバカを見た人もたくさん知ってる。
でも、それでも生きようとしている人もいるのだということ、それは、忘れたくないなと思う。