小さい頃、図書室で何度も繰り返し借りては読んでいた本がありました。
おはなし料理教室「こまったさんのスパゲティ」や「こまったさんのハンバーグ」…
作者は児童文学作家の寺村輝夫さん、シリーズはカレーやラーメンなど子どもが好きなメニューを題材にいくつもあり、お菓子編の「わかったさん」シリーズもありそちらも大好きでした。
主人公の「こまったさん」は花屋の奥さん。
「ご主人のヤマさん」と一緒に花屋を切り盛りしている、いわゆる共働きの兼業主婦です。(子どもはいないぽい)
トラブルに直面すると「こまった こまった」というのが口癖で夫のヤマさんが「こまったさん」とあだ名をつけた、とあります。
このこまったさんシリーズ、最近になって小1の娘が借りてくるようになり私も改めて読み返す機会に恵まれました。
ネット上でちらほら聞いてはいたんですよね、夫ヤマさんのモラハラぶり。
読み返してみてやっぱりあぁああってなりました。
たとえば第1作めの「こまったさんのスパゲティ」では晩ご飯が出来ていないことにヤマさんは腹をたててぷんぷん怒ってお酒を先に飲み始めて、そんな夫にこまったさんが「ごめんなさいね」って謝るシーンがあるんですね。
「こまったさんのカレー」では、仕事終わりのこまったさんに突然ヤマさんが「これから友達をたくさん連れて帰るから何か用意して」と頼む。困ったこまったさんは冷蔵庫の中身をやりくりしてなんとかカレーを作る、というお話。
読みながら「これを今改めて娘に読ませるのってどうなんだろう…」と正直思いました。
読ませて良いのかなぁ、亭主関白万歳みたいなこの内容、どうしたもんだろうと。
小学生だった自分はこれを何の疑問も持たずに読んでいたしむしろ大好きだった。
それは実家の父がヤマさんのような亭主関白を地で行く九州男児だったからなのか、まったく気になる事もなくただこまったさんの作るシーフードカレーに憧れ(母は牛バラ肉のカレーしか作らなかったから)、トマトの湯むきをする自分を思い描いてはうっとりしていたんですね。
さて悶々とする母を尻目に娘は楽しそうに「こまったさんのカレー」を読んでいました。
「おもしろかった〜〜〜」と満足げに言って、そして一言。
「ヤマさんも、お買い物して帰るとかすればいいのにね、いきなり電話して連れて来ちゃうと大変だよねえ」
あ、大丈夫だな、と。
これ読んで、娘が「妻の負担無視で突然電話だけで来客の世話を求める夫」を肯定する方向にはいかないんだなと。ちゃんと現実と見比べて理解してるんだなと。
そりゃそうだ、子どもだってそんなにアホじゃないんだよねえ。
「お母ちゃんの小さい頃からあった本だからね」
と答えると、そっか〜とさらっと流した娘。
娘たち世代にとって、きっとこまったさんの世界は「ひとむかし前」のお話。
もう昔話に近いんだなと。
彼女らはそれをちゃんと理解して、お話の中の面白いところだけを受け取って今をこれからを生きていくんだなぁと、なんだか悶々とした自分が恥ずかしくなったりしたのでした。
こまったさんのスパゲティ (おはなしりょうりきょうしつ 1)
- 作者: 寺村輝夫,岡本颯子
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 1982/07/20
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こまったさんのカレーライス (おはなしりょうりきょうしつ (2))
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