小さな子がいる父親の長時間労働や配偶者に合わせた休日の取り方を義務化して欲しい、という記事がTLに流れてきました。
いろんな人がRTしたり言及したりしていたので、共感を多く読んでいるのだろうなと思います。同じように悩んでいるお母さんがたくさんいるのだろうなと。
夫が「主夫」をやめて気づいた。国がやるべきは「女性の支援」じゃなく「男性の支援」 - エキサイトニュース(1/2)
こっちが沢山流れて来てるのですが、どうも元々の記事はこちらのようですね。
子育て支援に必要なのは「男性」のサポート | All About News Dig(オールアバウト ニュースディグ)
excite側のタイトルの付け方などに色々思わなくも無いですがまぁあまり私の書きたい事とは関係ないので置いときます。
この記事を読んで感じた違和感、が昨夜考えた事です。
たくさんの子育て中の方が共感されていた記事ですが、違和感を覚えてそこからまたお布団のなかでうんうんと考えました。
子育てに父親の力が今以上に必要だ、そうなれば少子化解消の一助になる、という点については私も同意します。
が、気になったのはここ
3歳以下の子どもがいる家庭の「男性」が、朝は8時半以降に家を出て、夜は18時より早く帰宅して、妻と同じタイミングで休日をとれるようにすることです。そういった働き方を「してもいいよ」ではなく、雇用側が「義務」として提供できるようにすることなんだと思います。
家の事をしたくない男性は、「早く帰ってもいいよ」と言われてもあえて残業するかもしれません。業績や昇進を気にする男性は、早く帰宅することで同僚から後れをとるかもしれないと心配するかもしれません。
だからこそ、生活リズムを子どもに合わせられるように、男性を支援する必要があるんです。
「義務」という言葉です。
義務化する、ということは、3歳以下の子どもが居る家庭の男性は本人の意志に関わらず雇用側が義務として家に帰さねばならないと国が定める、ということだと思います。
それで助かる人が居る、というのは事実なのかもしれません。
そして筆者さんも書かれているように、任意にしていたら評価や自分の我が儘を理由に帰らない男性も居るかもしれないから横並びに強制的に帰るような制度にしてほしい、ということなのかもしれません。
とある会員制ニュースサイトの記事の中には、月1回設けたパパの日という父親に早退させようという企画がある会社のことが書かれていたのですが、確実に家に帰ったかを確認するために自宅の写メを送ると。そこまで信用されてないという前提で育児に参加させられる、と分かっていて少子化対策になるの?と疑問です。
逆に自分が同じような、子どもを産んだのだから毎日4時までしか働くな、帰れ、と強制されたら?親だから母親だから当然だ、と思うのかな、私は気持ち悪くてそんな管理社会で生きていくのはやだなぁ。
「父親が子どものために仕事の時間を調整して早く帰ることができる」ということのメリットは否定しません。でも、本当にそれを義務として国民全員に課すべきですか?ということをあえて問いたい。
私の周りには、子どもが3歳より小さくても「夫が家に居なくてもいいからとにかく稼いできてほしい」という妻も実在します。それを実行している家庭もあります。もし上記のような義務が課せられたら、その家庭は困ることになる。
「今、自分がしんどい、そのしんどさを解消してくれればこんな良い事がきっとあるからそれを国にやって欲しい」という希望は、そのしんどさを同じように感じている人にしか響かない。
そして、そこにとらわれてしまっているとそれが実現したときにどんな歪みを産んでしまうのかに気づかなくなりがちじゃないかなと思います。
そのしんどさを解消するためには、必ずどこかに歪みが生じます。しわ寄せがどこかに必ず来ます。子持ちの会社員が時短勤務する、ということが義務化されたらそのメリットの影にどんなデメリットが生じるか、ということ、少子化対策に本当になるのか、なったとしてもどんな犠牲が出るのか、まで考える必要があるのではないかなと思います。
そんなことを呟いていたら、あるフォロワーさんから「自分はまだ子どもはいないけど、もしそれが義務になったら夫の稼ぎが確実に減ってしまうことになる。そう考えたら子どもを作ることを躊躇してしまうかもしれない。育児の大変さはリアルに想像出来ないから大変そうだけど踏み込もうかな、って思えるけど、金銭面はリアルに想定が出来る分減ると分かっていたらリスクは大きい」というメンションをもらいました。
このご意見をとっても、男性の短時間労働義務化が少子化対策に絶対に貢献する、とは断定出来ないんじゃないかなと思うのです。
こんな記事もありました。
育児熱心は出世しない? 漫画家・弘兼憲史氏が「男の育児」に異議 - ライブドアニュース
大まかな内容についてはへーはーって感じです。子どもの運動会より大事な会議を優先しないやつは仕事から外すとか、へーほーそーですかって棒読みしたくなるような記事です。
が、最後にとても大事なことが書かれていました。
なにより問題なのは、多くのパパたちがイクメンになったからといって、イクメンではないけれど仕事に打ち込んでいる父親への、ある種の批判的な意見が当然のように存在する、ということです。本来、どちらが正しい、こうあるべきだという話ではないはずです。
何かのライフスタイルをモデルとして掲げると必ずといっていいほど、そうじゃない人への批判めいたことが出て来てしまう。それが私はとても残念だなと思います。
働く母親の環境改善を訴えるとそれが専業主婦批判に繋がってしまったり、こうやってイクメンがもてはやされると仕事人間の父親のことが悪く語られるようになってしまったり。
もちろん、仕事ばかりで家庭を顧みない父親と振り回される家族という悲劇はよく作品化されるトピックではあるし、現実にそれで問題を抱える家庭もあると思う。でもその問題の根っこは「父親が長時間働いていた」からじゃなくて、機能不全の連鎖や親の特性や環境や、いろんな要素が絡み合っていることで働き方だけを悪者にしても何も解決はしないんじゃないかと思う。理想的な家庭環境に一見見えても問題を抱えて育っている人は本当にたくさんいるから。
話がややそれましたが、そうやって何かを良しとすると違うものを排他してしまう、その悪循環はそろそろ見直さないといけないんじゃないですか、と思います。
何かを良しとすることではなく、多様であることを容認しなくては前には進めないんじゃないかなぁ。
3歳までの子がいる父親が朝や夕方、休日にしっかり家に居る、それを強制する、でほんとにいいの?
その意志を無視した制度で子どもを産みたいと思う人が本当に増えるの?その制度で困る人は出てこないの?しわ寄せは誰にくるの?そのしわ寄せをどう解消するの?ということ。
そしてもう一つ。
3歳を過ぎてから子どもが問題を抱えることになったら?
(発達障がいが小学生になってから発覚する事も、突発的な自由で障がいを抱える事も、いじめられて不登校になることも。)
誰かの介護が必要になったら?
(介護は親だけじゃありません。親戚が少ない現状から伯父伯母などの近親者の介護に関わることになっている身内も少なからず居ます。)
家族が突発的な事故や病気に見舞われたら?
そのときは休めなくていいの?3歳より大きいから仕方が無い?それは少子化に関係ないから考えなくて良い?
本当に必要なのは、国のために子どもを増やさないといけない制度でもなければ意志を無視して子どもを育てないといけない制度でもないんじゃないかなぁと思うのです。
男単体と女単体が家庭を形成し子をなし親子だけの世帯で育てる、ことだけが生き方じゃないし。
自分のプライベートに合わせて働き方を変えていけるような企業が増えること、そしてそれをバックアップする制度を国が整えること、じゃないかなぁと思うのです。
男は、女は、とか言ってるうちはまだぬかるみにはまったままなんじゃないかなぁ。