スズコ、考える。

ぼちぼち働く4児のははです。

子供が親のお金を持ち出してしまったら。


毎週興味深く拝聴しているNHK第一ラジオの「すっぴん!」の育児相談、今日は尾木ママが答える回でした。

「息子が、親のお金を持ち出しているようです」

相談者:これから仕事さん(群馬県 30代 女性)

3歳、6歳、11歳の男の子3人の母です。1年ほど前から、家の中の物やお金がなくなることがあり、後に、長男の筆箱から弟の文房具が見つかったり、親のお金を持ち出して、ジュースなどを買っていたと判明したこともありました。なくなったお金を、誰がどうしたのかわからないことも度々ですが、年齢も低く、まだ一人でお金を使えない弟たちがとったとは、考えにくいです。
先日、長男の持ち物から、持っているはずのない500円玉が見つかり、確認すると「知らない」と言われました。その言葉を信じるべきだとは思うのですが、なかなか難しく、「あなたじゃないの?」と告げると、とても不満そうでした。これまで本人が認めた時には、しっかり話をしてきたつもりですし、お小遣いで足りない場合は相談するよう話していますが、うまくいきません。どうしたらいいでしょうか?

(参考:こそだてカフェ|すっぴん!|NHKラジオ第1

 

我が家の長男と同じ年齢の男の子に関する悩み、他人事ではないと尾木ママの回答をメモを取りながら聴きました。

 

お兄ちゃんとして頼りすぎ?

まず指摘されていたのは、母親と子のコミュニケーション不足でした。質問文の中に書かれていませんでしたが、このお母さんは1年前くらいから仕事を再開したとのこと。当時10歳の長男くんの下には2歳と5歳の弟がふたり。お父さんのことは書かれていませんが、協力があったとしてもお母さんが復職と保育園児2人のお世話で忙しかったことは想像に難くありません。

尾木ママはその環境の中で「気づかないうちにお兄ちゃんとして長男を頼ってないか」と問いかけます。

 

これ、我が家でも身に覚えがありすぎる事態です。11歳の長男の下は9歳次男、8歳長女、5歳三男。このお宅よりは年齢的な余裕はありますが、多忙で家に居ないこともある夫をあまり頼れないときには私の代わりに長男にあれこれと責任のあるお世話を依頼することもよくあります。自分の中でつい「お兄ちゃんがいるから大丈夫かな」という気持ちがどこかにある。頼っているんだなぁ…と。

 

もちろんお兄ちゃんとしてお手伝いをしてもらうことそのものが悪い訳ではないと思います。ただ、尾木ママは復職した後に長男のお兄ちゃんとしての役割が増え、気づかないうちに負担が増えている可能性はあるかも、と指摘していました。

 

コミュニケーション不足からのすれ違い?

お母さんの多忙と長男くんの負担の増加、ここから、コミュニケーション不足が起こっていないか、と尾木ママは続けます。長男くんが例えば「お金がほしい」と伝えるような言動があったときにお母さんが忙しさから「後でね」と流してしまっていたりして正面から長男くんを受け止められないことはなかったか、と。お金を持ち出す行為は受け流してしまうことで長男くんが「聴いてもらえない」と思い、自分で動いてしまった結果かもしれない。

丁寧なコミュニケーションに時間が割けなかった結果、長男くんが自分で行動を起こしてしまったとしたら、疑ったり問いただしたりするのではなく長男くんの声をゆっくりと聴く必要があるようです。

 

対応策①「どうしたの?」

おうちのお金に手をつけてしまった長男くんに対して親としてつい問いつめたくなってしまうかもしれません。状況証拠から恐らくは長男くんが人の物に手を付けているのは間違いなさそうだったとして「あなたが取ったの?」「お金を取ったのはあなたじゃないの?」と聞いてしまいたくなるかもしれませんが、尾木ママはそれをNGと仰っていました。

狭い質問ではなく広い質問を

質問の内容を狭めてしまうと子供は答えに困窮し、結果「知らない」とか「わからない」と黙してしまう可能性が高いそうです。これ、我が子に対しても実感のあること。特に多弁ではない男の子の場合どう答えてよいかわからなくなったときに短い言葉や声にならない言葉で会話を途切れさせ、そこから感情を閉ざしてしまいがち。

 

「犯人はあなたでしょう?」という回答がYesかNoしかない狭い問いではなく、「どうしたの?」と広く受け止められる言葉を投げかけることでそこから本人の言葉を引き出していくことで長男くんの抱えていた問題行動の原因となる気持ちが少しずつ見えてくるかもしれません。

この傾聴には私のブログに何度も登場しているこの本がやっぱりお勧めです。

子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方 大全

子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方 大全

 

 この本について実践してみた過去記事はこちら。

かなり厚いですが、章に沿って少しずつ自分のペースで子供たちの気持ちを引き出すためのメソッドを実践できる1冊です。

 

心の声に耳を傾ける

「あなたでしょう」と決めつけたり、「お金を取るのは悪いことだ!」と決めつけてしまわずに丁寧に子供の気持ちに寄り添って声に耳を傾けることで少しずつ子供が抱えていた言葉にならなかった色々な気持ちが見えてくるかもしれません。

 

「お母さんが忙しそうだったから自分で借りてしまった」とか「自分で考えなさい、って言われたからそうしたんだよ」とか、子供なりの事情が出てくるよと尾木ママも仰っていました。

 

共感と説明、そして相談

そうやってやっと言葉にすることができた子供なりの事情を頭ごなしに否定することなく「そうなんだね」と受け止め、「そんな気持ちだったんだね」と共感する。そして、お母さんにはお母さんの事情があることを説明し、どうしたら良いかを一緒に考えていく。

 

問いつめられて「知らない」と言ってしまった長男くんは「お金を取るのはやってはいけないこと」だというのはわかっているはずです。それでもその問題行動に至ってしまった。そこに必要なのは叱責や矯正ではなく、言葉にできなかった声に耳を傾け、お母さんの事情も丁寧に伝え、家族として協力していけるための対策を一緒に考えていくことなのだと思います。

 

対応策② お母さん自身の自己管理

もう一つ注意しなくてはならないこととして尾木ママが挙げていたのは「お母さん自身の自己管理」でした。

お金を取られて「いるかもしれない」、という不確定な状態になってしまっていることの問題点を指摘し、子供がもし手を付けたらすぐに気づくことができるような自己管理が必要だと仰っていました。ごもっとも、ですよね。私も片付けがそもそも苦手なうえに自宅に帰ってから慌ただしくカバンをそこらへんに放り投げてしまうこともよくあるのでこれは注意しなければと反省です…。自分の財布に1円単位で今いくら入ってるかも把握しきれてない…要注意です。

 

対応策③ 頼り過ぎない

弟妹がいる場合、親は多忙から上の子のことを頼りがちになりやすい、と指摘されていました。お手伝いやお世話が情緒や家事育児スキルの習得のためのメリットになる部分もあるだろうとは思いますが、あまり頼り過ぎないよう意識する必要はあるのではないか、と尾木ママも指摘されていました。

特に思春期やその入り口にいる男の子は口数が少なく負担に感じていてもそれを表に出さないケースも多いのでより注意が必要だとのことです。

長男もまさに前思春期、いつも頼りがちですがそれが負担になり過ぎてないか注意していかねばとまたまた反省です。

 

犯罪の目なのでは?

番組内ではTwitterなどで寄せられたリスナーの声として、「これは犯罪の目なのでは?」という質問が来ていました。尾木ママはこれを「全く違います」とバッサリ。

家庭の中だけで起こっていることであればそれが犯罪に繋がるということはまずない、と仰っていました。

気になるようであれば、学校など自宅外の場所で同じような行動がないかは確認した方が良いとアドバイスされていました。学校の備品や友達の持ちものを引き出しなどに入れてしまうなどの行為が無いか。もしそれがあれば問題の対処法はまた変わってくるのかもしれませんが、もし自宅の中だけで起こっているのであればこれは犯罪に繋がる話ではなく「親子関係の問題」だとお話され、提示されたようなゆっくりとお話ししたり負担を軽減したりするような長男くんの気持ちに寄り添っていく対応を勧めておられました。

 

便利に使われちゃう「コミュニケーション不足」「愛情不足」…

ここからは私の感想です。

お金を取ったのがコミュニケーションが足りなかったから。

「コミュニケーション不足じゃないですか?」「愛情不足じゃないですか?」これ、子供の問題行動に直面したときに親が言われる一番耳が痛い言葉ではありますよね。そして問題を抱えた子について保育園幼稚園や学校で指導者側から飛び出してくることも多い言葉でもあります。働くお母さんには本当に身につまされる、ぐさっと刺さる言葉。

便利なんですよね、問題行動の原因を「おうちにあるんじゃないですか?」「コミュニケーションが足りないんじゃないですか?」「接する時間が短いんじゃないですか?」って投げてしまえば保育や教育の現場に原因は求めなくて済むから。

私も長男が学校に行けなくなったとき担任からまず言われました。

「寂しいんじゃないですか?」「親子で過ごす時間を増やしてみたらどうですか?」

 

結果から言うと長男の不登校の原因は担任だったので的外れな助言だったのですが、親子で過ごす時間を増やし、私が長男の言葉にゆっくり耳を傾けることを強く意識し始めてからやっとその原因が少しずつ見えて来たのも事実です。私や夫が日常的に長男のうまく言葉にできない気持ちを汲み取るような傾聴に時間を割けていたら不登校に至るまえに気づくことが出来ていたかもしれない。

 

子供の問題行動があらわれたとき、その原因がすぐにわかることの方が少ないかもしれません。原因はコミュニケーション不足かもしれないし、そうではないかもしれない。

短絡的に「愛情不足だろう」と結論付けて親のせいだけにしても何も解決しません。乱用されるこの言葉に不快感も懸念も覚えます。

 

ただ、今回のお悩み相談に関して言えば尾木ママの出したこの結論、私は的確だったんじゃないかと思うのです。適当に責任を親に投げているのではなく、ゆっくり耳を傾けてあげればきっと解決するだろうという見通しを感じられたからです。傾聴を通してもしかしたらコミュニケーション不足以外の長男くんが抱える問題が見えてくる可能性もあるのかもとも思います。

 

寂しいから、お金を取る?

もう一つ感じたこと。寂しいから、親が話を聞いてくれないからお金を取るなんておかしいと思う方もいらっしゃるかもしれません。自分も親にあまり構ってもらえなかったけどお金なんて取ってない、という方も。

 

ここ、イコールで語るのは危険だと思うんですね。「子供の話をちゃんと聴かないとお金を取る子になるよ」ではないんです。この相談のなかの長男くんの抱える問題がたまたま「お金を取る」という形の問題行動として現れてしまった、ということだと私は思います。

 

これまで私のブログの中でもたびたび子供の問題行動については触れてきました。

子供たちは自分の中に何かしらの問題を抱えた時、それを色々な形で表出させます。爪かみや自傷行為などの自分に向かう形もあるかもしれませんし、おねしょやお腹を痛がるなどの体の不調として出てくるケース、暴言や学校での態度が悪くなったりという不適切行動として出るケースもあり得ます。

その行動そのものを抑えても子供たちがどんな問題を抱えていたのかは見えないままです。そしてその問題をお腹の中に隠したまま大人になってしまうことはとても危険です。爆弾としていつ爆発するかわからない。

 

問題行動は一つのサインです。

今回のお悩みのケースだと「お金や物を取る」という行為として現れた子供の問題を早い段階で丁寧に耳を傾けることで引き出し、行動そのものを否定することなく行為がなくなっていくまで寄り添っていくことで将来の爆弾の芽を一つ摘めるのかもしれません。

 

おわりに

「子供がお金を取った」その行為にもし直面したら、犯罪者としての未来がちらつき、親として恐れおののいてしまうかもしれません。ショックで子供に辛く当たってしまうかもしれない。

でもきっと、一番しんどいのはその行為を親に知られてしまった子供なんだろうと思うんですね。小さな体で、一番大好きな人を悲しませたり、怒らせたりしてしまった現実に直面している子供たちにどこまで寄り添ってあげられるのか。

問題行動に直面するのは親としてとても辛いけれど、でも将来に問題を残さずに済むチャンスを与えられているのかもしれない、と私は思います。しんどさを配偶者や親しい人たち、ネットでも構わないと思う、子供以外の色んな相手にうまく吐き出しながら、子供たちに寄り添っていける親でありたいと改めて思いました。

 

※余談ですが、いつでも完璧な親は無理です。先日のエントリでも触れましたが、3割できてれば上々、そのくらいの気持ちで7割できてない自分に自分で寄り添ってあげながら今日もぼちぼちがんばっていこうかなと、そんな感じです。

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