新学期を迎え、我が家の子どもたちもそれぞれが進級、次男は中学生になりました。
発達障害のある次男の入学に向けては、支援級か通常級か、どんな支援が必要か、本人がどんなスキルを身につけておくべきか、余裕を持って準備をして来たつもりでした。
それなのに「その日」が近づくにつれ、当人ではなく私の方が不安に潰されそうになり周りに心配されてしまうほどに、入学のプレッシャーは大きく私を襲っていました。
ちょうど一年前に長男を入学させた同じ学校、知っている先生も多く残っているし、特別支援コーディネーターの先生とは昨年度から何度かお会いしてお話をして来ているから次男のことも理解してくださっている状態で。
「何がそんなに心配なんだ」「考えすぎだよ」
と夫に笑われてしまうほど。
入学式当日の朝は過呼吸で倒れるんじゃないか、というほど緊張してしまい「あなたはこれまでしっかり準備して来たし、何かあったら俺が出て行くし、考えすぎないで大丈夫だから」と夫に声をかけられながら、なんとか次男と学校の門をくぐりました。
クラス分けが貼り出された掲示板の前には新入生の群。
友人と顔を合わせて嬉しそうに連れ立って昇降口に向かう次男とはそこでお別れをして、保護者は体育館へ。
途中で、式典の準備をしている先生方の中から長男の学年部の先生が顔を出して声をかけてくれました。
「お母さん!長男くんね…」と笑いをこらえながら話し始める先生。
「制服の背中、しわくちゃだったの、今日!」
「やってしまった!」と正直動揺しました。
次男の入学準備に気を取られて、昨日長男が制服をハンガーにかけてなかったかもしれないとか、今朝身なりを整えて出かけたかなんて頭からすっぽり抜けていたんですね。
苦い顔をして「次男の準備に気を取られて…」と言いかけた私に先生は笑いながら続けました。
「いいのいいの、前から見たらわかんないしね、それに、もう自分でできるようにならないといけない年なんだから、お母さんはほっといていいのよ」
「お母さんはほっといていいの」
ドスン、とボディブローを食らったような気がしました。
何日も前から次男の入学が不安で不安で、彼がうまく中学に適応できなかったら、学校で何か問題を起こしたら、勉強についていけなかったら…
その山のような不安の根っこにあったのは、他でもない私自身の怖さでした。
「何かあったら自分がそれをなんとかしなくてはいけない」
そう思い込んでいたような気がします。
「それが中学校なんだよ」
「中学の先生は何かあったら親じゃなくて子ども自身を中心に考えてくれる」
「だから、心配し過ぎなくても大丈夫だよ」
発達障害のある子を育てる先輩お母さんにこのことを話したら、そう教えてくれました。
私の不安をよそに、彼らの新しい生活は始まっていきます。
真新しい制服に身を包んだ次男は、慣れた様子で家を出て行くお兄ちゃんを追いかけるように早足で登校していきました。
その背中を見送りながら、中学生になったんだなと噛みしめている自分がいました。
発達障害があろうと、まだしっかりしないように私の目に映っていようと、彼は中学生になったんだなと改めて感じています。
私も、中学生のお母さんとして腹を括らねばならない、そう思った春の朝でした。