スズコ、考える。

ぼちぼち働く4児のははです。

窓口対応にキレた話から考えた、クレーマーにならないように窮状を訴えるスキルのこと


 

発端はこの記事に取り上げられている漫画です。

 

気になったのは、私も同じような経験があったから

自分が同じように当てにしていたものが用意されておらず困ってしまったら…

過去を振り返ったとき、似たような場面で同じように動揺して必死に窮状を訴えていたような記憶があります。

そして、窓口の方の対応が冷たく感じで同じように「わかってもらえない…」と悲しくなったり、その悲しさがつのって怒ってしまったこともあったなぁと振り返ったんですね。

 

私とこの漫画を書いた方に共通しているように感じたことがあります。

それが、漫画の中盤に描かれていた患者としてのスタンスの部分。

 

医者や病院に対して逆らわないようにしていた、治療してもらっているのだから信頼しないと、と考えていらっしゃる。

 

医者から薬を提案されている場面で、副作用に対する不安があるのにそれを口に出さずに受け入れる様子が描かれています。

 

ここで、あっ、と思ったんですね。

 

思い出した、三男の入院時のエピソード

赤すぐさんの連載に書いたことがあるエピソードなのですが、昨年三男が大ケガをして救急搬送され、翌日に大きな手術、そして半月ほどの入院と退院後2ヶ月ほどの車椅子生活をしました。

 

病院に来てすぐの処置から手術前のいろいろな検査などお医者さんや看護師さんがきてなにかしようとするたびに三男は

「しゅじゅつってなに?」

「いやだ」

「こわい」

「なにをする?」

「そしたらどうなる?」

と何度も何度も口に出します。

 

その度に手を止めさせてしまうのが申し訳なくて、私はその度にすいませんすいませんと思っていたし、それを言葉や態度に出したり、三男を制しようとしたりしていました。

 

でも病院の方はみなさん快く三男の不安に答えてくれるんですね。

 

手術の前にもお医者さんや看護師さん達が何度も顔を出してはどんなことをするか詳しくお話をしてくれ、三男が口にした不安についても嫌な顔ひとつせず「そのときはこうするよ」「そうはならないよ」とひとつずつ答えてくれます。

 

不安をバンバン口にしてしまう三男を前につい「すいません、色々言っちゃって…」と言ってしまいました。


そしたら看護師さん、きりっと笑いながら「言ってくれないとわかりませんからね〜」って言ってくれたんですね。

 

言わないで怖くなってしまったりする方があとあと大変で、不安なことや気になることはどんどん言ってくれた方がこちらもなにをすればいいかハッキリするから分かりやすくてかえって助かるんですよ、だから何かあったらもっとどんどん言ってくださいね、と笑いながら話してくれました。

 

たしかに不快や不安をバンバン吐き出していた三男は手術室に入るときには看護師さんに押される車椅子から私たちに手を振ってくれるほど余裕を見せてくれました。

術後の入院生活も嫌がることなく安心して過ごしていたように思います。

しっかりお話ができた病院の人たちを信頼することができていたからなのかもしれません。

 

不安ややってほしいことをうまく言葉にできていなかった自分

入院する時に病院で見かけたポスターにも、看護師さんが言ってくれたのと同じことが書かれていました。

 

痛い、辛い、不安…気持ちを伝えてもらったらそこからあなたに寄り添う医療ができるようになる、そんなニュアンスのことが書かれていた記憶があります。

 

三男の言動やそれに答える病院のみなさんの対応を見ていた入院生活。

その中で、自分がいかにこれまで必要なことを伝えずにいたのかを痛感したんですね。

 

言われるままに従うのが良い患者だと思っていたような気がします。

でも自分の中の思うことをうまく汲み取ってくれないお医者さんや看護師さんに出会うと「あそこはよくないな」とか「合わないな」と思ったこともあったなぁと。

 

それは医療に対してだけではありませんでした。

学校に対しても先生方にはなるべくいろいろ言わないのが良いと思っていたような気がします。

 

自分は気持ちや要求を言葉にするのはあまり得意ではないのかもということ。

三男を見習って、病院でも学校でもいろんな場で、もっと気持ちを言葉に出していい、その方がお互いのためにいいのかもしれない、と思うようになりました。 

 

自分ならどうしただろう、と考えて見えてきたもの

漫画を読み返して、いまの自分ならどうするだろう、と考えてみました。

漫画のなかで主人公さんは窓口で訴えているんですね。

自分は医師にきちんと頼んだということ、CD-ROMがないと役所への申請ができないこと、今日はこの足で役所へ行く段取りでスケジュールを組んでいること、出直すとまた予定も狂うし体調も悪いなかでやっているのに、ということ。

 

さらに言葉にしない思いとして、こうならないように付箋を使ったりして丁寧にお願いをしていることやレントゲンをとるために医者の言うなりにわざわざ出直してまで撮影をしてもらっていること…

 

ここまで言ってるのに、やってるのに。

 

でも病院の窓口の方は「私に言われても…」という雰囲気。

 

そして、噛み合わない会話。

どこに食い違いの要因があるのか、を掘り下げてみます。

 

訴える側が見ているものと、訴えられる側が認識しているもの

主人公さんと窓口の方の話が食い違った要因のの1つめはお互いが考えているスタンスのズレだと思うんですね。

 

主人公さんは窓口の方を『病院の人』として訴えかけています。今回の診断書を取り扱うすべての方を代表する存在、つまり、ミスの当事者とみなして窓口の人と接している

 

でも窓口の方はご自身のことを『誰かが用意したものを手渡すよう指示された役割』、つまりミスしたのは自分ではない、と認識して主人公さんと接してる。

 

ここに1つ目の要因があると思います。

 

求めているのは何か

食い違いのもう1つの要因に見えるのは、主人公さんが求めていることが相手にうまく伝わっていないのではないか、ということです。

 

窮状は訴えているんだけど「今日出してもらわないと困るんですけど…」という、下手に出ながらなんとかしてもらおうという雰囲気は読めるのですが、それは要求としては100%のうちの100をごり押ししている状態で、向こうには「交渉しようとしている人」ではなく「無茶を言っている人」と受け取られてしまっている。(だからその場を納めるために帰そうという方向に対応が向かってしまう)

 

キレる前の段階で

「そちらのミスなので迅速な対応を望む、最短でいつ用意できるのか」

という対等なスタンスでの交渉に臨んでいるか、というとそれが十分でないようにも読めるんですね。

 

もしいま、私が訴えるなら

もしいま自分が直面したら…

①こちらは間違いなく頼んだのだから病院側でミスが起こったのは事実、まずそれを認め謝罪するのが筋。ミスをしたのが窓口ではないというならミスをした担当者本人やそこを統括する上司、すぐにわからないならわからないで然るべき関係者がミスを認めていただきたい。

 

②ミスを認めた上で、今ここにCD-ROMがないのは仕方ないとして、リカバリーに最善を尽くしてほしい、つまり、今から当たり前の時間をかけて用意するのでは困るわけで、最短でいつ出来上がるのかを明確にしていただきたい。

 

この2点を主張するだろうな、と思ったんですね。

 

逆に考えると、ミスのせいで予定が狂って窓口に困窮を訴えているところで向こうから「こちらのミスでご迷惑をおかけして大変申し訳ない。急ぎ用意をするので一時間待ってもらえないか」と先に言われたら溜飲は下がりやすいかもしれない。

 

要点は2つ。

①ミスがあった事実を認める

 =当事者同士で事実確認をしどこに非があったかを共有する

リカバリーのために最善を尽くす

 =100%の補償ができない可能性も含め、

  非の割合が高い側が最善の努力の姿勢を見せ、

  双方で落とし所を見つける話し合いが成立する

 

ここまで考えたところで、じゃあなんで現実がそううまくいかないんだろう、と思ったのでそこを掘り下げてみます。

 

モンスタークレーマーと届かない訴え

漫画に描かれていた主人公さんは一生懸命窮状を訴えていました。

でもその思いは届かず最後に怒ってしまい向こうはそれに応じるように急に対応を早めてくれる結果になってしまいます。

これでは言う側は「キレれば話が通る」という経験を積むことになるし、病院側からは「この人は思うようにならないとキレるから気をつけて」と思われてしまう、意図せずモンスター認定されてしまうかもしれない。

 

なんでそうなっちゃうか。

前章の要点にあげた2つが鍵になると思います。

1つ目の、事実確認の話し合い、まずこれが成立するか、ということ。

そして2つ目の、落とし所を見つける話し合いが成立するか、ということ。

 

この2段階の話し合いが成立する要素が「お互いに」ないと無理なんだろうなぁと思うんですね。

 

今回話題にあげた漫画の件だと、患者さんの側にもこの話し合い交渉に持ち込むスキルが、窓口の方の側にもミスがあった事実から起こっているこの話のこじれに対応するスキルが、お互いにそれが備わっていたら、話の流れはもっと違っていたんじゃないか、と思ったりしました。(もちろん漫画から全てを汲み取るわけにはいかないので、憶測に過ぎませんが)

 

結局何が言いたかったかを振り返る

なんかだらだら書いてたら長くなったのだけどもうまとめ直す気力も体力も時間もないのでこの辺で締めようと思いますが、要は、「話し合うスキル」って意外とみんな持っているようで持ってないんじゃない?っていうのを感じる場面が最近結構あって、それについてこの漫画でも同じような引っかかりを持ったよって話でした。

 

余談ですが、一度お話を聞いたことのあるでかい障害児親の会のお母さんから教えてもらったことがあって、新入りの親御さんにまず勧めるレクチャーが「学校との交渉スキル」なんだそうです。

 

まず、声のトーン、話す調子、スピード…と言った「喋り方」

そして、何をどう求めていくかという「交渉術」

 

それを身につけておくと学校との話し合いが格段にやりやすくなるよ、というお話を聞いて目から鱗がボロボロと落ちました。

 

もちろん、誰でも自然に身につかなくても仕方ないし、どうにも苦手なものはあると思う。

でも、ひととおり読んで「あれ?自分も?」って引っかかりを感じる人がもしいたら、訓練次第で交渉が少し上手になる可能性もあるかもしれないよってことは頭の片隅にあると全然そこからが違ってくるかもしれないなぁと思ってダラダラと長く書き連ねたのでした。おしまい。

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