スズコ、考える。

ぼちぼち働く4児のははです。

「パパの睡眠時間を削れ」というお話から考えた、夫婦間の問題解決についてのお話


直接のリンクは貼りませんが、ツイッターでとあるパパさんのブログ記事が流れてきました。

 

内容をざっくり要約すると、ママの睡眠不足をなんとかしたいという思いから書かれているのかな、「俺は明日仕事だから」と育児を肩代わりせずに自分の睡眠を優先する父親がいるらしい、というお話から、人の命を預かる医者でも子育てに立ち向かっている人がいる中で「たかが14時間勤務くらいの普通のブラック企業勤めの旦那さん、しかも営業だの開発だの、別段人が目の前で死ぬわけでもない仕事」の方に向けて、「そんな仕事で『俺は明日仕事だから』とか言ってる場合じゃない」と書かれていました。

 

ママの睡眠不足は緊急事態なんだから仕事だからとか言ってる場合じゃない!

パパが睡眠時間を削ってでもフォローしないと!

 

そういう主張をなさっている方なんだろうな、とは思いましたし、それそのものは間違っているとは言い難い内容だとは思います。

事実私も、うちの子たちの乳幼児期に睡眠不足で辛かった頃、隣でスヤスヤと眠る夫にほのかな殺意を覚えたことがありますし、それをブログにしたためたこともございました。

 

いや、もう4年も前のことでしたか。

当時の夫は現場関係のお仕事をしていたので暑い日も寒い日もずっと外仕事、ぐったり疲れて帰ってきていたので「私の代わりに睡眠を削れ」とはとても言えない状況でした。

 

この時の私は、寝ている夫に対する苛立ちを某高級アイスを買うことで紛らわしていました。解決策がそれしかなかったのか、といえばそうではなかったなと今では思うのです。

 

もっと実家を頼ってもよかったし、ファミサポを頼んでもよかったし、家事代行をお願いしたってよかった。

本当にしんどかった時には友人に白旗をあげることもできたかもしれない。(私が今、育児中の友人から「寝たいから子守にきて!」と言われたら飛んでいきます)

 

でも当時の私にはそんなこと思いつきませんでした。

育児は夫婦でなんとかしなきゃいけない、と思っていたし、外に何かを頼むハードルがすごく高かった。結果、自分で抱え込むことになってしまっていました。

 

 

私の話はこのくらいにして、本題であるブログに戻りましょう。

 

これ、どうも炎上しているっぽいのかなんどもTLに流れてきます。

なぜこんなに紛糾するのか。

それは、きっと問題がごっちゃになっててあちこちに刺さっているからだと思います。

 

「お父さん」という立場の方がどんなお仕事をしているか、それは家庭の数だけ違いがあります。でもそれを無理やり一括りにしちゃってますよね。

そして「お母さん」という立場の方のしんどさがどの程度かも、個々に違う。

 

家族の数だけ多様さがある問題を、総論として語ろうとするから無理があるんです。

 

この落とし穴は、こと育児に関する議論の中でよく起こりがちだなと思います。

過去に、こんな記事を書いたこともありました。

 

3年前の記事ですが、これも、小さいうちは父親は早く帰って家にいるべきだ!という意見から出たものだったと思います。

 

どちらの事案も、父親という属性の人が

「朝通勤して会社という建物の中でデスクワークをして夕方から夜にかけて帰宅する」

というプロトタイプを基にして話していると思うんですね。

もちろん、多数派の傾向をモデルにして議論を展開する必要があることもあるとは思います。

 

でも、少なくとも育児に関しては「各家庭でどう対処するか」という小さな枠組みの話としてしか答えは出ないんです。

 

夫婦それぞれの性格、生い立ち、コミュニケーションや援助を求めるスキル、職業や職場環境、住居の状況や生活環境、周囲の環境や福祉の状況、生まれた子供の健康状態、特性…

 

いろんな要素が絡み合っていることで、それを見つめ直さないと答えは出ない。

他の家庭でうまくいった方法が自分の家庭でうまくいくとは限らない。

 

当該のブログ記事に関して、

 

というコメントをツイートしていたら、「夫婦で見るしかない状況でどんな打開策が?」というご質問をいただきました。

 

色々端折って結論から言うと、答えは「そんなことわかりません」になっちゃうんですね。

なぜって、その家庭ごとの事情が全くわからず検討のしようがないから。

 

お父さんの職業や就業環境がわからない状態で「いまの睡眠時間を削ればいい」が本当に正解か、それは誰にもわからないと思うのです。

 

当該のブログではお医者さんという命に関わる職業の方を挙げていらっしゃいますが、車を運転する業務がある方が睡眠不足で事故を起こせば当然命に関わってきますし、現場仕事の方が足場の上で睡魔に襲われても同じです。

 

お父さんの睡眠時間を削るのが可能なのか、は、その家庭を細かに検討しないと答えは出せないんですね。

 

そして、私が一番引っかかるのは、その、答えがわからない現実があるにもかかわらず繰り出される、特定の属性に対する「このくらいならできるだろう(なのにやらない)」という批判です。

 

この程度なら誰だってやれるだろう、という一括りにした物の見方は、「専業主婦なんだからやれるだろう」とか「この程度の家事なら誰でもできるだろう」というお話と根っこは同じではないでしょうか。

 

かくあるべき像を父親に求めることは、これまで女性がされてきて辛かった母親像女性像の押し付けとどう違うんでしょう。

押し付け合い続けることは夫婦双方にとって良い結果を生むでしょうか。

 

ツイートの中で私が話していたのは、個別のお話ではなくて

「削り合うことが正解、という話が本筋になってしまっていいの?」

という大きな枠のお話です。

 

そして、ご質問いただいた

「他の打開策は何が?」

というのは、個別の事案を掘り下げないと見えてこない小さな枠のお話。

 

話のステージが違うんですね。

 

大きな枠組みのお話としては、ファミサポや福祉のサポート、夫婦という小さな枠の中で苦しい状況にある人たちをサポートする仕組みはどんなものが用意できるだろうかという行政の視点、ボランティアとして活動する人たちがいるとしたらどうやって周知を測ろうかとか、発達特性や生い立ちの問題を抱えた夫婦へのサポートとして何ができるか、父親が育児に参加しやすい職場環境の構築のためには…

いろんな角度からの、仕組みづくりや活動のお話ができると思います。

 

問いかけていただいた打開策は何が、ということに関しては、それぞれの家庭の状況を詳しく教えていただければこういう案もあるのでは、というお話はできると思います。(それを私が請け負えるかというとそれはまた別のお話ですね)

 

そして、これはちょっと次元の違うお話になりますが、打開策が欲しいと思っていたけれど実際に必要なのは打開策ではない、という可能性もあります。

(実は、睡眠不足から夫への殺意がわいた私に必要だったことの大部分はこの、打開策ではなく「誰かに聞いてもらう」という経験だったりもしました)

 

育児に関して、思うように動いてくれない配偶者についての苛立ちが募ったときに自分の代わりに相手を罵倒してくれる強い言葉に惹かれてしまうことがあると思うんですね。

でも、それに引きずられて本来大切にしなくてはならないはずの自分の身近な家族を見据えることができなくなってしまわないか、と気になります。

 

ネット上には理想的な父親像を語る方がたくさんいます。

目の前の自分の夫と見比べて、その眩しさが刃物のように刺さることもあるかもしれません。

 

でも、その眩しさで目がくらんで、目の前の家族の正確な輪郭がつかめなくなってしまう。これは、夫婦関係に限らず子供に対しても起こりうるなぁと思っています。

 

理想像があって「そこに当てはまって欲しい」というのは、高じれば上から押し付ける形の抑圧にもなりやすい。

 

「今、ココ」から、

「今、この家族」から、

幸せになるためにどうしていったらいいか、というのは、それとは逆の、下から積み上げていく形の解決方法なのかな、と思います。

 

積み上げるためには、前述したような細かな、それぞれの背景に目を向けなくてはいけません。大変なことだし、労力もいります。一人でできないことだってあると思います。

質問箱やツイッターを通して私もささやかながらお手伝いをさせていただくこともありますが、まずはそんな場で、抱えているものを吐き出しながら整理するところからかな、と思っています。

 

思うように動いてくれない夫のことを罵ってくれる強い言葉に惹かれたら、それは一つのサインかも知れません。吐き出す必要があることを溜め込んでいること、整理したい感情があるかも知れないこと。

そしてもし私のことを思い出してくれたら、お返事が遅いかも知れませんがよかったら声をかけてくださいね。

 

 

ダラダラと長くなってしまいましたが、恐らくは今年最後になるでしょうブログ記事をそろそろ締めましょう。

 

今年も、とても不定期で思いつきに発信されるブログにお付き合いくださいましてありがとうございました。

 

この一年、こんぺいとサロンの開催や質問箱での人生相談めいたやりとりなど、これまでのイシゲスズコとしてのソーシャルメディアの使い方が大きく変わってきた年になってような気がしています。ブログによる発信頻度もそれに伴って変化している気がしますが、来年もほそぼそと続けていこうと思っていますのでよろしくお付き合いくださいませね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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